技術レポートタイトル

2001.9.30号
 器具からの排水が開始されると、排水管内の水と空気が相互に混乱し、管内の圧力は変動します。そして排水管と直結しているトラップの封水にも圧力の変動が伝わり、排水が行われている間は、排水していない他の器具のトラップ封水面もたえず昇降を繰り返しています。一方、トラップには各種の形状・構造があり、同一の管内圧力変動であっても封水深・脚断面積比・封水量などの違いによって封水損失の状況が異なってきます。
 HASS218-1999「集合住宅の排水立て管システムの排水能力試験法」では、「排水立て管システムの管内圧力」と「試験用トラップの封水損失」を試験判定条件としていますが、封水損失は、管内圧力との関係が十分明らかにされている場合は、省略することができることになっています。
 当社実験タワ−において試験用トラップとして使用しているKT7PIC(当社製洗濯機パン用排水トラップ)の管内圧力と封水損失の関係を実験検証しましたので、その結果の一部を報告します。

試験用トラップの管内圧力と封水損失

・供試トラップ(試験用トラップ)
KT7PIC 50 洗濯機パン用排水トラップ
流入脚内径
流入脚断面積(A1)
72 [mm]
40.7 [cm2]
流入脚外径
流出脚内径
流出脚断面積(A2)
78 [mm]
103 [mm]
35.6 [cm2]
脚断面積比 (=A2/A1)  0.87
封水深        
50   [mm]
・備考
1) HASS218-1999でいう試験用トラップとは、脚断面積比が0.8〜1.2のトラップのことをいう。
2) HASS206-2000「給排水衛生設備規準・同解説」には、「トラップの封水深は50mm以上とする。」という規定がある。


供試排水システム
供試継手 JIS K 6739 排水用硬質塩化ビニル管継手 90°大曲がりY(LT)100×50
脚部継手 JIS K 6739 排水用硬質塩化ビニル管継手 90°大曲がりエルボ(LL)125
排水横主管 ストレート5m
排水負荷 定流量負荷


実験方法と実験結果
 排水負荷の与え方はHASS218-1999に準拠し、最上階(9F)定流量0.5[l/s]から始め、増加の刻み間隔は0.5[l/s]とした。封水損失の測定は流入脚内封水とし、測定には超音波式変位センサーを用いた。
超音波式変位センサー:(株)キーエンス製 UD-310

実験毎に発生した管内圧力と封水損失の関係を右図にプロットした。

CP排水システムにおける3F試験用トラップの封水挙動

供試継手 CP60K 100×65
脚部継手 LJ-K 100×125
排水横主管 水平2曲がり7m(2500mm+2500mm+2000mm)
排水負荷 定流量負荷 3.0 [l/s]


3F試験用トラップの水位の挙動を「動画」でご覧いただけます。(0.6MB)

3F試験用トラップの水位の時系列挙動

ご注意(重要

排水システムの排水能力はHASS218-1999「集合住宅の排水立て管システムの排水能力試験法」により実験的に求められます。しかし実際の建物に採用されるトラップは、試験用トラップと同等の封水強度があるものばかりではありません。トラップの封水強度を確認のうえご採用ください。
 封水強度とは、排水管内に正圧または負圧が生じた時の、トラップの封水保持能力のことをいいます。

関連リンク

CP/KST/JIS排水能力の比較は、こちら
どう対処する?上層階のオフセットは、こちら

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