技術レポートタイトル

2003.1.31号
 築25年から30年を経過したマンションの「排水管の改修」現場を見学させていただきました。外壁の塗装や屋根防水工事に比べ、専有部に設置された共用の排水立て管やそれに接続される、専有の排水横枝管の取り替えは、修繕工事の中でも最も大規模となる工事ではないでしょうか? 排水器具から下水の本管まで排水管路はすべてつながっています。工事中の排水規制や住戸に立ち入っての工事は、区分所有者ひとり一人の理解と協力が絶対条件です。前回に引き続き改修現場レポート続報をお届けします。なお、本レポートは北海道設備設計事務所協会機関誌「Space」に寄稿したものです。
 
排水管改修現場からの知見
株式会社 小島製作所
専務取締役 小島誠造
4.新規物件へのフィードバック
 改修の現場において解決してきた様々な課題は、新規物件を設計・施工する上で参考となる多くの情報を含んでいます。
 4-1.PSの広さ
 築25年前後の改修現場を見る限り、トイレの裏に余裕のあるPSが確保されていました。当時の排水通気システムは簡略化された二管式(ループ通気管のない二管式)を採用している物件が多く、汚水立て管、雑排水立て管、通気立て管の3本がPSに納められています。改修に際しては排水用特殊継手を用いた伸頂通気方式を採用し、汚水・雑排水を立て管で合流させます。そのため3本の立て管を1本に集約でき、何とか施工も可能な状況です。適正なPSの広さを一義的に決めることはできませんが、補修のためのスペースとして、同じ排水立て管システムをもう1系統配管できる程度の平面を確保しておくことが望まれます。また、見学した現場すべてでトイレのPS側の壁を全面にわたり取り壊して改修工事が行われていました。点検口はあくまでも点検ができる口であり、補修のことを考慮しておくならば、取り外し可能な壁が理想です。
 4-2.超高層物件について
 平成14年度の首都圏マンション供給戸数は約88,000戸の史上第三位となる高水準の見込みのようです。中でも東京都心部では20階建て以上の超高層マンションが次々と建設されています。都市基盤整備公団に35階建ての超高層排水実験タワーが建設されて以来、特殊継手排水システムの超高層住宅への適応性に関する実験が様々行われてきました。減速、旋回をしながら流下していくシステムにおいても立て管の配管長が長くなる(階数が高くなる)と通気抵抗が大きくなり、許容流量が低下することが判ってきました。また、横主管の曲がり数、曲がりまでの距離、曲がりの形態などによっても許容流量が低下することも認識されるようになりました。確かに初期性能に関する研究は進んできましたが、改修の現場を目の当たりにすると、超高層物件の維持管理や将来のための改修方法について心配が募ります。

図-4 改修前(汚水立て管)
  手前:汚水横枝管 奥:台所流し横枝管
  トイレ壁裏の余裕のあるPS

図-5 改修後(汚雑合流立て管)
  左:台所流し横枝管
  中:汚水横枝管
  右:浴室・洗面横枝管
1) 台所流し系統の管内付着状況は図-3で比較したとおりです。ディスポーザを設置している場合には油脂分とスラリー状の粉砕生ごみが一体となって状況はますます悪化します。放置すると付着物は角質化し洗浄にも困難を伴います。排水管の洗浄には高圧洗浄方式が一般的ですが、高さ100mを超える建物の場合、地上に設置した高圧洗浄車からホースを引き回して洗浄する方法では危険度が高く、かつ経済性の点からも好ましい方法ではありません。集合住宅排水管洗浄協会が推奨しているステーション方式*1により、定期的な洗浄を行うことが重要となります。洗浄用の電源、給水栓、排水口を4層ごとに設け、できれば設計図書の中に「どのような洗浄方法で、どういう頻度で洗浄するか」を明記しておくことがポイントです。
*1 ステーション方式とは、最下階から4層ピッチごとにエレベータ近傍に200V電源用のコンセント及び給水栓、排水口を設け、電力駆動ミニジェット洗浄機(3相、200V、5.5kwポンプ、水量20〜30[l/min]、圧力80〜100[kg/cm2])を用いて、共用部排水立て管、住戸内排水横枝管を洗浄する方式 <住洗協ニュース会報11号より>

図-6 そうじ し〜な シリーズ
(継手胴部のSプラグを外し、排水立て管も排水横枝管も、ここから洗浄ができる。)株式会社小島製作所製
2) 排水立て管の改修を進める上で最も大変なことが工事日程の調整です。工事のために住戸専有部に立ち入る日には在宅を要請しなければなりませんし、工事中は同一の排水立て管系統に接続されている住戸では使用禁止となります。1系統に接続される住戸が多くなればなるほど(超高層になればなるほど)調整は困難をきわめ、不便をお掛けする期間も長くなります。排水管洗浄の場合でも、住戸専有部に入らなければ洗浄ができないようでは、同じような悩みが発生します。このような点から排水立て管を共用部に設置し、補修や更新のためのPSに予備スリーブを設けておくことは有効であると思います。
5.最後に
 ご批判を覚悟で思いつくまま勝手なことを述べてきました。いくら良いものでも付いて回るのはコストのことです。一方で資源やエネルギーの無駄をなくし、再利用や再生による環境負荷の低減要求は待ったなしです。コストと技術の間で技術者として今ほど倫理観を求められる時代はないのではないでしょうか?
 マンションの寿命を全うするために、どのような排水システムを構築しておくべきか?そのためにメーカーとして何をご提案していったらいいのか?今一度熟考しながら、結びとさせていただきます。

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